2010年11月22日

今後の高音質音源の販売について考えた

Paul McCartney & Wings の "Band on the Run" は結局アナログ盤(+320kbpsのMP3ファイル)を購入しましたが、この組み合わせってすごく相性が良いということに気付きました。

そんなわけで、今後の高音質音源の販売について考えてみました。
今後、高音質レコード(記録物)は「アナログ盤+配信」になるのではないかと思います。

現状でもPaul McCartneyのように高音質のファイルをInternet上で販売しているケースが増えてきました。
HDtracksでも結構な量になります。

高音質での配信なので、購入するのはある程度限定された層だと思います。
(そこそこの音質であればiTunes StoreやAmazonで安く購入することができますから)

高音質の音楽配信を購入する層=すでにCDを持っているけど、もっと高音質なものを入手したい層なのではないかなと思います。
(音が目的の人もいるかもしれないけど)


以下のように並べてみると、アナログ盤のデメリットを音楽配信の手軽さがうまくカバーできるとともに、逆に音楽配信のデメリットをアナログ盤がカバーできているように思います。

アナログ盤のメリット
  • メディアによるフォーマットの制約が少ない(16bit, 44.1kHzというCDフォーマットの縛り、SACDという著作権保護の縛りが無い)
  • 高品質、高音質なものを制作することができる
  • 大きい(デメリットだったりしますが)
  • モノとしての愛着が持てる
アナログ盤のデメリット
  • 手軽に扱うことができない(再生環境が必要になる)
  • 普及しているデジタル・オーディオ・プレイヤーで再生するためにはデジタル化する必要がある
  • 重い(メリットだったりしますが)
  • かさばる

音楽配信のメリット
  • 完成後、すぐに発売することができる
  • 購入後、すぐに再生することができる
  • CD音質以上のものを販売することができる
  • かさばらない
音楽配信のデメリット
  • 所有しているという実感が無い
  • DRMという制約がある場合がある

普段使いは音楽配信の音源を用い、ここぞという時はアナログ盤でという組み合わせ。
趣味性の部分は大きなアナログ盤で満たされるという関係。

現状では、趣味性の部分はCDが主流です。
数多く発売されている紙ジャケット(紙ジャケ)CDの再発が典型的。
音楽CDの紙ジャケ化という「盆栽的」な販売戦略が繰り返されています。

紙ジャケCDがなぜ売れるのかと考えると、
  • 「限定販売」である
  • 「ノスタルジー」をくすぐる精巧なつくり
この二点なんじゃないかと思います。

限定商法は「買っておかねば」という気持ちにさせますし、当時を知る人にとっては精巧なミニチュアはうれしいものなのかもしれません。
(オリジナル盤の中古は高くて手が出せないけど、紙ジャケCDなら気軽に買えるし、あとで高値で売れるかもしれないという「気分」もありますね)

これに加え、SHM-CDやBlu-spec CDなどの「高品質」メディア。
(高音質らしいけど、Blu-spec CDの紹介では「高音質」との記載は無し)


参考
SHM-CDとは
Blu-spec CDとは


消費者からしてみれば、30年後、40年後も腐食しないCDであればそれが一番。
いつの間にか腐食して読み込めなくなっているCDが一番厄介。(そういう面での高品質であって欲しいものですが)

HDCDのようにフォーマットに手を加えるのではなく、素材からのアプローチなので、マスタリングという工程次第でどうにでもという印象が強いです。

参考
HDCD

以上のように、「紙ジャケCD」や「高品質CD」には賛同できずにおります。
紙ジャケCDだけでの再発(しかも初CD化)だったりするとそれを買うしか無いのですが、通常版があればそっちを買っています。
「高品質CD」も同様で、国内盤が「高品質CD」で値段が高ければ安い輸入盤を迷わず買っています。

アナログレコードと音楽配信のセットであれば、ミニチュアではなく「本物」ですし、小さな紙ジャケを愉しむよりもずっと実用的。
(ミニチュアとして楽しむという人もいるのかもしれませんが、本物があってのミニチュアですしね)


最後のアナログ盤世代の私にとっては、新譜をアナログ盤で買うかCDで買うかを選択できたわけだし、(プラザ合意以降の為替レートの変動と流通面が大きく変わった頃なので)高い日本盤を買う予算で安い輸入盤を複数枚買えることの方が重要でした。(1.5〜2枚程度かな)

購入するメディアをCDに変更したのが1989年頃だから、それまでは余程の特典が無いかぎりアナログで購入していました。

日本盤特有の「帯」に対してもそんなに思い入れがあるものではありませんでした。
(CBSソニーのように帯にしていない会社もありましたしね。ここは紙を折っただけのカバーでした。日本盤CDのカバーみたいな感じ)

逆に日本盤の事情として、
  • 「マスターテープの質」(当時はアナログマスターなので劣化が生じる。当時、世界第2位の市場だからと言って鮮度の高いマスターが使われていたとは限らない)
  • 「音質よりも安全を優先したカッティング」(針飛びや歪みを嫌ったカッティング)
で、日本盤は音質が良くないという印象がありました。

参考
クラッシュ制作日記20~東洋化成でのアナログ・カッティング立会い「デジタルにはない人のぬくもり」

あきらかに当時の日本盤シングルが一番おとなしい音だった。
当時を振り返って社長とTさんが話していたのが
社長「そういえばうちは針飛びや歪みに関して非常にうるさかったので、溝を深く刻まなかったんだよなあー」

少ない予算(小遣い)のやりくりなので、安価かつ音が良ければそっちを買っていたわけです。
(ジャケットの印刷やレコードプレスの品質は日本盤の方が良かったりしましたが、それはそんなもんだと思っていれば問題無し。)

意外にしぶとく生き残っているアナログ盤。
USではCDという形態での販売だけでなくアナログ盤との併売もどんどん増えています。
(Amazon.comにはVinyl Recordsのストアもあります)

高音質で再生するとなると、再生環境もそれなりのものにする必要がありますが、CD以上の品質を求めるのは限定された層。「高音質での配信」に関心がある層と重複するのではないかと思います。
というわけで、今後の高音質レコード(記録物)は「アナログ盤+配信」になるのではないかと思う次第。

アナログ盤+配信って、昔やってたアナログ盤を買ったらカセットに録音して、普段手軽に聴くのはカセットでという方法と同じじゃないかと思ったりもして。


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