2012年7月4日

著作権法改正 - 日本の音楽配信にいろいろと動きが

SONYからはクラウド型の音楽配信サービス、ビクターやエイベックスからはDRM撤廃と日本の音楽配信に関する話題が連日報道されています。

AV Watch - ソニー、「Music Unlimited」を日本で開始
ソニーは3日、クラウド型の音楽配信サービス「Music Unlimited」を日本でも開始した。30日間1,480円で1,000万曲以上が聴き放題のサブスクリプション型のサービス。加入後最初の30日間は無料で体験できる。

ソニー プレスリリース
1,000万曲を超える楽曲を聴き放題で楽しめる 定額制の音楽配信サービス
「Music Unlimited」を7月3日より 日本にてサービス開始
サービス開始当初は、株式会社EMIミュージック・ジャパン、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサル ミュージック合同会社、株式会社ワーナーミュージック・ジャパンなどの主要音楽会社を始め、多数のインディペンデントレーベルなどから許諾を受けた楽曲を提供し、今後、順次追加していきます。

Napsterが撤退してから随分経ちますが、次はどうなる?Spotifyが日本でサービス開始?と思っていたら、Sony Entertainment Networkだったという話。


実際にMacOS+Webブラウザという環境で試してみました。(登録しなくても検索や試聴は可能)
http://munlimited.com/go

Steve Winwood で検索したのが下の画面。利用登録していないので試聴は頭の30秒だけ。



現時点でのアルバムの品揃えは不満が残るものでした。
http://en.wikipedia.org/wiki/Steve_Winwood_discography

Wikipediaのディスコグラフィと見比べていただくのが早いんですが、初ソロ作の "Steve Winwood"(1977)はあるのに、 "Arc of a Diver"(1981) と "Talking Back to the Night"(1982) が抜けているのはなんで?という感じ。CDの入手性で言えば逆なんですけどね。(売れた枚数も)

Steve Winwoodだからなのかと思い、Beckでも検索してみましたが、全てのアルバムが出てこなくてこんなもんなの?というのが試してみた感想です。
楽曲はこれから増えていくんでしょうし、今後に期待したいところ。CD化されていない音源も欲しいですしね。

オンラインでのストリーミングだけでなく、オフラインでの再生にも対応していますが、再生機器の制約は多いようです。(以前のNapsterに比べれば対応機器は多いのかもしれないけど・・・)

プレスリリースから
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201207/12-091/
4) オフライン再生
インターネット経由のストリーミング配信に加え、Xperia™などのAndroid™搭載スマートフォンやAndroid™搭載“ウォークマン”、PlayStation®Vitaでは、事前にインターネットに接続してプレイリストやチャンネルをキャッシュすることで、オフライン再生も可能。地下鉄や飛行機など、インターネットに接続できない環境でも、お気に入りのプレイリストやチャンネルの楽曲を楽しめます。

Walkmanだと「Zシリーズだけ」ってことですね。Aシリーズ、Sシリーズ、Eシリーズには対応しないということ。
Walkman用のWindowsソフトですら "SonicStage" と "x-アプリ" があってややこしいのに、今回のサービスとmoraの関係はどうなるんだとか、ソニーはもうちょっと整理した方が良いと思います。


続いては購入したデータの"DRM"(コピー制限)に関するニュース。

日本経済新聞 - 音楽配信、コピー制限を撤廃 端末選ばず楽曲再生
ビクター・エイベックスなど
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2809B_T00C12A7MM8000/?dg=1


ビクターエンタテインメント(東京・渋谷)など音楽各社はインターネットで配信した楽曲のコピー制限を年内にも廃止する。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)などにダウンロードすると、メーカーの違う機器にも転送し再生できるようにする。欧米に出遅れたコピー制限の撤廃が日本でも始まれば配信サービスの使い勝手が改善し、低迷する音楽市場も活性化しそうだ。

記事では、先日成立した改正著作権法「違法ダウンロード」の罰則化(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)が後押しになってという感じで書かれています。
違法ダウンロード罰則化によってDRMを撤廃しても違法コピーに『一定の歯止めがかかる』んだそうです。(違法コピーで金額云々は業界の一方的な数字なんで読み飛ばしてもOK)

本来のねらいは、記事にある『個人が購入した楽曲データを「スマホやタブレット(多機能携帯端末)などいろいろな機器で楽曲を楽しみたい」とする利用者のニーズも反映した』ということなんだろうなと思います。

それぞれのDRMで「囲い込み」だったところに、スマートフォンの急増という大きな環境変化。それまで好調だった「着うた・着うたフル」の販売が不振になり、その対策という印象を受けます。

DRMほんと厄介で、この機器では再生できるけどこの機器は再生できないというややこしさ。しかも買ったデータは提供側の終了や利用者側のOS変更で使えなくなるようなもの。

Wikipedia - DRMへの批判
  • 恒久的な再生が保証されていない
  • 消費者の権利に対する制限
  • 特定環境への依存

利用者側の多様化で「Wakmanだけ」「携帯電話だけ」じゃ通用しなくなってきたという側面が大きいと思います。今までは売る側の都合に合わせて買わせていたけど、それが通用しなくなったということかと。

いままではWindowsPCだけを考えていれば良かったけど、スマートフォンやタブレットの存在感が増してきてそれを無視できなくなってきたということ。(携帯電話売り場に行けば並んでいるのは圧倒的にスマートフォンな時代ですからね)携帯用に着うた(曲)を買って、moraでアルバムを買って、Walkmanに入れてという風にいかなくなってきたと。

いよいよPCやMacを中心に置き、対応機器へという図式が崩れてきたということでもありますね。
(Appleの提唱した「デジタルハブ」は真ん中にiTunesがあってというもの。すでにAppleのiOSではiTunes無しでもiPad、iPhone、iPod Touchからのアップデートが可能になりクラウドへ。すでに「デジタルハブ」じゃなくなっています)

DRMについては、iTunes Storeはすでに撤廃していますし、Amazon.co.jpのMP3ストアは最初からDRM無し。
機器に合わせて販売する(買う側が不利)ということの限界、逆効果だということに(ようやく)音楽業界が気付いたということだと思います。

日経の記事ではDRM撤廃をするのはビクター、エイベックス、ワーナーミュージックなどでEMIミュージックやユニバーサルミュージックは一部配信会社向けから順次見直すとのこと。ソニー・ミュージックエンタテインメントは検討中とのことですが、既存のサービス、アプリケーションソフト、再生機器、そして「Music Unlimited」とどう折り合いを付けていくのか。あれもこれもやり過ぎですよ、ソニーさん。


日経の記事にある10月からの改正著作権法での「違法ダウンロードの罰則化」で担保されたからというのはそもそもおかしな話で、今回の著作権法改正以前に違法アップロードへの罰則があったわけです。
前回の法改正で「違法と知りながらダウンロードする行為」はNGになっていたわけでそもそも罰則は不要と言っていたのが音楽業界(日本レコード協会)だったわけです。今回の著作権法改正(施行は10月)で罰則化されたから「DRMをやめてあげよう」というのは音楽業界の身勝手さを感じるところです。


関連
SONY 「x-アプリ」を使ってみた
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/sony-x.html
「私的違法ダウンロード刑罰化」やるべきことは「教育」と「アップロードの取締り」
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/blog-post_9801.html
続・「私的違法ダウンロード刑罰化」やるべきことは「教育」と「アップロードの取締り
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/blog-post_20.html
著作権法改正 -「1998年をピークに」を掘り下げてみる
http://tiiduka.blogspot.com/2012/06/1998.html

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